Hayama Ranのブログ

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ストレスが悪者にされた2

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夕暮れの大波止に帆船が停泊中

買い物を終えて外に出ると、息をのむような夕焼けをバックに帆船が停泊していました。

帆船にイルミネーションが施してありましたが、写真にはうまく写りませんでした。

一瞬コロナのことなど忘れて、立ち止まってしまいました。

 

さて、ケリー・マクゴニガル氏の著書

 

で、ストレスが悪者にされた歴史が紹介してあります。前回に続いて紹介していきます。

 

もくじ

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前回のまとめ

前回のブログをまとめると、

ネズミに過酷なストレスを掛けて、衰弱させ、病気になることがわかったことから、実験を行ったセリエ氏は、大胆な仮説を立てました。「人間の病気はストレスが原因」だという仮説です。そして、ストレスを大胆に「外部からの刺激に対する体の反応である」と定義づけました。

 つまり、外部からの刺激は全てストレスということになり、ネズミを苦しめた暗いイメージがストレスに被せられ世の中に広まっていったわけです。

 

しかしこれだけでは済まなかったようです。

 

普及活動

セリエ氏は、ストレス学説を世界中に触れ回りました。

フランス、スペイン、イタリア、ドイツをはじめいろいろな国で、医師や科学者たちに講義を行いました。ノーベル賞候補者として10回もノミネートされたと言います。

 

そして、研究活動への思いがけない資金提供者が現れます。タバコ業界です。

今では信じられないと思いますが、陰謀もあって「タバコがストレスによる害に役に立つ」とアメリ連邦議会で証言まで行ったと言います。

「ストレスで胃が痛くなりそう」「ストレスで死にそう」などという言葉は、セリエ氏の普及活動によるものと言えそうです。

ハンガリーで1936年から始まったセリエの研究は85年経った今、日本で誰でも知っている言葉として普及しています。しかも、セリエ氏が最初にイメージづけた通りにマイナスイメージのまま一般に使われている–––一部の医療関係者やストレスの専門家を除いて–––と思います。まるで、「ストレスは、いずれ実験用のネズミのような運命を引き起こす」と言わんばかりに。

 

1970年代

セリエ氏が研究を進めていくと、ストレスにも「良いストレス」と「悪いストレス」があることがわかってきました。(「ストレス=外部からの刺激に対する体の反応である」という彼の定義からして)

刺激から受ける体の反応は、全てが病気につながるような反応ではないことがわかってきたからです。

その部分についてケリー氏は

…………。そして、(セリエ氏が)ストレスにも「よいストレス」と「悪いストレス」があると言い始めました。さらにストレスのイメージを改善しようとして、1970年代のあるインタビューでは、こんな発言をしています。

「ストレスは常に存在します。ですからストレスが自分の役に立つように、そして、周りの人たちの役に立つように、うまく利用することが大事です」

 しかし、もう手遅れでした。セリエの業績によって、ストレスに対する恐怖は、すでに医学会のみならず一般の人びとにまで浸透していたのです。

と 述べています。

 

ネズミの実験でストレスという今まで聞いたことのなかった恐怖が世界中に広がったわけですね。ストレスの最初の研究から85年、セリエ氏が「うまく利用することが大事」と発表してから40年以上経つのに、ストレスのイメージはネズミの過酷な実験のイメージのまま社会に残っているようです。

ケリー氏は「負の遺産」という言葉を使って

 ストレス研究にはいまだにハンス・セリエの負の遺産が見られ、ストレス研究のほとんどは、人間ではなく実験動物を対象に行われています。こんにちに至るまで、ストレスが健康にもたらす害について、これまであなたが見聞きしたことの大部分は、ラットを用いた研究事例に基づいています。

と表現しています。

 

人間だと…

ネズミの実験を人間に経験させるとすると、こうなるようです。

  • 突然、何度も容赦なく電気ショックを与える

        ⬇︎

  • 水の入った這い上がれない水槽に投げ込まれ、溺れそうになるまで泳がされる

        ⬇︎

  • ケージの中に一人で閉じ込められる

        または

  • 大勢の人と一緒にケージに入れられ、少ない食料を奪い合う

到底、試してみようという実験ではありません。こんな実験をしたとして、病気にならないわけありませんね。

そして、人間が日常受けるストレスは、これほど強烈で過酷ではありません。極端なストレス実験の結果を、しかもネズミの実験結果を、人間の日常のストレスの反応に当てはめようとするには少し無理があるような気がします。

 

今日はここまで。続きは次のブログで。