ランナーズハイ 3
200万年前、気候変動による自然環境の変化で、原始時代狩猟や採集を長距離で行う必要に迫られた原始人。
走るためのカラダに変わっていきました。
・短い前腕
長いと、走るとき腕を振るのが大変。また、地面で生活する時間
が多くなり木の上で枝の先のほうにある木の実をとる機会が少な
くなったのが前腕が短くなった理由でしょう。
・長い大腿骨
大股で走れることで、1歩で進む距離が延び、スピードがアップ
しました。
・大きな殿筋(=でんきん:おしりの筋肉)と長いアキレス腱
長い大腿骨を後ろに押し出し、つま先部分で強く地面を蹴れるよ
うになって、前に力強く進むことができます。
・霊長類で唯一項靭帯(=こうじんたい 頭蓋骨の底部と脊椎をつな
ぐ線維性膜)を持つ
走っても頭がぐらぐらしない
という進化をしてきたと、昨日のブログで書きました。
このような進化をしてきたということは、持久性がなかったり、体が進化しなかった人類は残念ながら死に絶えてしまったということになります。
ありがたいことに、今この世界に生きている私たちは、狩猟採集民族の末裔であり、持久力にたけたDNAを持っていることになります。
狩猟や採集時の報酬の仕組みとしてランナーズハイが起きることがわかりました。
獲物や木の実などの採集の過程に喜びを感じなかったら飢え死にしてしまいますもんね。
ケリー・マクゴニガル氏の著書で
このランナーズハイをもう少し深く研究した人が紹介されています。
アリゾナ大学の人類学者デイヴィッド・ライクレン氏です。
脳内化学物質の「内因性カンナビノイド」という物質には、
・苦痛を緩和し
・気分を向上させる
という作用があることがわかっていたものの、彼が実験するまで「
高強度運動ではエンドルフィンが脳内で分泌される。したがって、ランナーズハイはエンドルフィンが作用したもの。」と解釈されていたようです。
※ちなみにエンドルフィンをウェブリオ辞書で調べると
・脳内麻薬物質
・鎮痛鎮静作用がある
・分泌されると精神的に落ち着く
などの作用があるようです。
内因性カンナビノイドのほうが原始人の狩りや採集への脳内報酬としては良さそうです。ランニング中にこの物質がどうなっているか調べた人はいなかったため、ライクレン氏が実験で調べました。
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・参加者=定期的に走っている人
・トレッドミル(電動で地面が動く走るためのマシン)を使用
それぞれの運動前と運動後を調べる
・30分のウォーキング
・全速力走(当然数秒しかできなかったでしょう)
・ジョギング
を行ってもらった。
⇩結果
・30分のウォーキング、全速力走では内因性カンナビノイドの血中濃
度は上昇しなかった。
・ジョギングでは内因性カンナビノイドの血中濃度は3倍上昇した。
・実験でジョギングをした人はハイな気分になったと答えた。
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なるほど、何とも覚えにくい(覚えなくてもいいのですが…)「内因性カンナビノイド」がランナーズハイにかかわっているということがライクレン氏によって実証されたわけです。
ライクレン氏は、ウォーキングで内因性カンナビノイドが増えずにジョギングで増えた理由を、狩猟採集活動と同等の運動の場合にもたらされる報酬と考えたようです。
その考えをもとに動物でも実験が行われました。
犬とフェレットで行われました。
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・犬(獲物を追って長距離を移動できるよう進化)
予想⇒持久運動をすると内因性カンナビノイドが分泌される
・フェレット(イタチを品種改良した動物。野生のイタチは夜行性で
逃げ足の遅いものや動かないものを食べる)
予想⇒持久運動をする必要がないため、内因性カンナビノイドは
分泌されない
30分間トレッドミルを走らせる
・フェレット⇒内因性カンナビノイドの血中濃度は上昇しなかった
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視点を動物、狩猟で獲物を追いかける動物にも向けたのには感心します。まず、発想がありません。
おそらく犬も散歩より、走らせた方が間違いなく喜びそうです。そのためには飼い主も体力がいりますが…。
内因性カンナビノイド―この覚えにくい名前の―が多方面から研究され、さらにわかってきたことがあるようです。
明日に続きます。